「仕事もしたいし、結婚もしたい。でもどちらを重視すればいいのか迷ってしまう」

そんな思いを抱える20~30代女性は少なくありません。ですが、これは単なる個人の悩みではなく、今の日本社会が抱える構造的な課題と表裏一体です。少子化・婚姻率の低下、働く女性の増加、そして未だ不十分な制度・職場文化。こうした時代背景の中で、「結婚 or 仕事」の選択は、個人の価値観だけで決められる問題ではなく、どのような条件・制度・文化のもとで選べるかを問われることでもあります。

実際の統計を見れば、「結婚後も仕事を続けたい」と考える女性が多い一方で、ライフイベントによるキャリアの中断、不安も根強く存在しています。

本記事では、社会情勢と統計データを交えつつ、結婚と仕事の関係をリアルに整理し、制度的制約を見据えたうえで、あなたが納得できる判断をできるような視点を提供します。

現代日本の結婚・出生・働き方をめぐる社会情勢

まずは社会のマクロ傾向を押さえておきましょう。これを踏まえることで、あなたの選択が「社会の中でどう立ち位置を持つか」が見えやすくなります。

  • 婚姻件数の減少・婚姻率の低下
    令和5年(2023年)の婚姻件数は 47 万 4,717 組です。前年(50 万 4,930 組)より約 3 万組の減少。人口全体の婚姻率は 3.9 となり、低下傾向にあります。この背景には、若年層の結婚意欲の減退、経済的不安、働き方・ライフスタイルへの価値観のシフトなどが指摘されています。(参照元:厚生労働省 令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況日本総研 婚姻数の減少と結婚に対する意識の変化

  • 出生数・少子化の加速
    2024年の出生数見通しは約 68.5 万人。2023年比でさらに大幅な減少見込みとされており、合計特殊出生率は 1.20 を下回る可能性も。婚姻件数だけでなく出生数も低迷するなかで、結婚・出産を選択できるかどうかは、ますます社会的負荷と隣り合わせになっています。(参照元:2024年の出生数は68.5万人、婚姻数は47.5万組の見通し

  • 女性の就業率・継続就業の変化
    かつて、結婚・出産・育児を機に女性のキャリアが断絶される “M字カーブ” は典型的な現象でした。近年は制度整備・意識変化の影響もあり、第1子出産前後の女性の就業継続率は 約 69.5% に上昇。ただし、この継続の裏側には「正規 vs 非正規」「制度の使いにくさ」「職場文化の壁」など複雑な制約があります。(参照元:男女共同参画局 家族の姿の変化・人生の多様化

このような時代背景のもとでは、結婚や仕事の選択は個人の内発的価値観だけで決めるより、社会構造の制約を見ながら選べるかどうかを重視する視点が不可欠となります。

結婚と仕事についての統計データ

仕事と結婚・出産を両立しようとする女性の声は強く、実際の行動も変化しています。統計から事実を押さえておきましょう。これらのデータからわかるのは、「結婚しても仕事を続ける意志を持つ女性が多い」「ただし雇用形態や制度、家庭環境次第で継続できるかどうかは大きく左右される」という現実です。

結婚後も就業を継続する女性が増えている

「結婚しても仕事を続ける意志を持つ女性が多い」「ただし雇用形態や制度、家庭環境次第で継続できるかどうかは大きく左右される」という現実です。

・結婚前「結婚後も仕事を続けたい」と考えていた女性のうち、約 72.9% が実際に結婚後も同一就業を継続している。(参照元:厚生労働省統計データ

・結婚退職率は、過去に比べて低下傾向にあり、1980年代は30~40%水準だったものが、最近では10〜20%程度に落ち着いているという分析もあります。(参照元:内閣府 第3章 女性の就業と出生を巡る課題と対応 第2節

・結婚・出産後も働きたい女性は74.1%、共働き希望派が71.5%。(参照元:Job総研

結婚後の就労は、正規と非正規がほぼ半々

結婚後も同一企業・同一職種で働き続ける割合は、正規雇用で 60.1%、非正規雇用では 40.3%。(参照元:厚生労働省統計データ

女性が休まず働き続けた場合の生涯賃金は約 2.5 億円程度

大学卒女性が休まず働き続けた場合の生涯賃金は約 2.5 億円程度。つまり、継続して働けるかどうかは、将来的な収入・経済的安全性に直結する。(参照元:ニッセイ基礎研究所 大学卒女性の働き方別生涯賃金の推計(令和5年調査より)

制度・働き方の環境

統計データだけでは見えにくいのが、制度や働き方環境の使われ方と限界です。これを押さえておかないと、「理想ばかり語って実行できない」選択に陥る可能性があります。

育児休業・時短制度の普及と課題

  • 日本では育児・介護休業法や改正法施行により、育休制度自体の整備は進んでいます。(参照元:労働政策研究・研修機構 育児・介護休業法等の改正について

  • しかし、制度を「利用しやすいかどうか」は別問題。多くの女性が「制度はあるが申請しづらい」「昇進に不利になる可能性」「職場の理解がない」などの理由で使いにくさを感じています。(参照元:内閣府 女性の就業と出生を巡る課題と対応

  • また、制度利用後の復職支援・時短勤務の継続・正社員登用の道など、働き続けやすい環境への移行に乖離が残るケースも多くあります。

働き方文化・企業の硬直性

  • 在宅勤務・フレックス制度など柔軟な勤務形態は普及段階にありますが、依然として「出社が常識」「長時間労働前提」の風土を変えきれていない企業も多い。(参照元:男女共同参画局 雇用等における男女共同参画の推進と仕事と生活の調和

  • 昇進制度や評価制度が「長時間勤務」「顔を出す」ことを重視する旧型モデルを基準に据えている企業では、時短勤務・時差出勤・在宅勤務をしている社員が不利になる構造的なハードルがあります。

  • 地方・業種によっては、制度があっても適用できるポジションが限られる、業務形態や職種自体が柔軟性を持たないという構造的制約も無視できません。

制度と意識のギャップ

  • 制度設計上は「男女平等・共働き支援」を掲げていても、家事・育児の分担意識、性別役割観、パートナー・家族の理解度、地域支援インフラの違いが、使える制度かどうかを決定づける要因になります。

  • 「制度があれば大丈夫」と捉えるのではなく、「制度と実態・文化がどれほど噛み合っているか」を見る視点が必要です。

「優先すべきは、結婚か?仕事か?」を決める前に押さえたい視点

結婚か仕事かをどちらかに縛られるのではなく、自分の価値観・人生設計を見つめる視点がカギです。以下の視点をもって考えると、迷いが整理できます。

1. ミッション・価値観を中心に据える
どんな人生を送りたいか(家庭重視?自己実現重視?バランス重視?)を、自分の言葉で定めておく。

2. リスク許容度とキャリアコストを見積もる
中断リスク、キャリア落ち、ブランク期間、再就職難易度などを考慮に入れる。

3. 制度・パートナー支援の環境を評価
勤務先制度(育休・時短・在宅制度など)、パートナーの家事・育児分担、住環境、支援ネットワークなど。

4. 小さな選択の積み重ねから検証する
まず「この1年」「この3年でやってみたい選択」をいくつか実験してから、より大きな決断をする。

5. 柔軟性を残す判断設計
状況が変わることを前提に、転換可能な選択肢を構えておく(例:時短勤務 → フルタイム復帰、キャリア転換、兼業スタートなど)。

実際の選択パターンとケーススタディ

ここでは、いくつかのパターンと、それぞれのメリット・リスクを紹介します。

パターン

メリット

リスク・注意点

仕事優先型(キャリア重視)

実力を積みやすい・収入が安定・自己実現を得やすい

プライベートが犠牲になることも・出産/育児との両立難

結婚優先型(家庭重視)

安定した家庭生活・子育て・安心重視

キャリアブランク・復帰の難しさ・経済的依存

共働き・バランス型

収入も役割も分担・柔軟性をもたせやすい

両立ストレス・調整の難しさ・制度や環境依存度高

段階型転換型

仕事を続けながら徐々に家庭重視へシフト

転換時期の混乱・切り替えコストがかかる可能性

 

結婚・仕事の選択を「自分基準」で決めるためのステップ

  1. 5年後/10年後のビジョンを書く:どんな暮らし・どんな働き方・どんな家族か、具体的に想像して書き出す。

  2. 選択肢を挙げて比較するワーク:たとえば「夫婦共働き/私が専業/私が時短+副業」など複数案を出して、メリットデメリットを比較。

  3. ミニ実験・体験してみる:たとえば週1だけ時短勤務を試して感覚を確認したり、将来的に副業で収入柱を持ってみる。

  4. パートナーとビジョンをすり合わせる:価値観・役割・期待を言語化して共有。どこまで相互支援できるかを合意しておく。

  5. 決断後も見直しできる設計にしておく:途中で軌道修正可能な選択肢を残しつつ、今できる最善を形にする。

まとめ:優先の答えは「相対」ではなく「自分」へ

結婚と仕事、どちらを優先すべきか?――その答えは他人に用意されているものではありません。
ただし、統計や現実を踏まえ、自分の価値観と環境を見つめた上で選べば、後悔の少ない決断になります。

大事なのは「縛られた選択」ではなく、「自由に決められる選択肢」を持つこと。
そしてその選択を支える情報・共感・実践が、ChildrenGalleryやLifeCurateのようなプラットフォームで提供できる価値になります。

 

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